幼保連携型こども園 岳暘保育園

旧園舎の老朽化による建て替え計画を設計し実施しました。
木造平家建の新園舎は、延べ面積574.69m2の小規模のこぢんまりとした建物です。
敷地環境周囲は小高い山々や名峰岩木山、そして東側に広がる平野・・・その様な風景をヒントに建物の形が決まりました。
そして何より子供達の安全をテーマに設計しました。
その一例をご紹介いたします。

建物の構造は木造平屋ですが、基礎の下に特殊な発泡材を敷き詰め、浮基礎工法としています。
この事で地震の影響を軽減するとともに、
床下断熱も達成する一石二鳥の効果を考えました。
外壁はロックウールによる外断熱工法です。
ここでも断熱と防火の効果を同時に狙ったものです。

子供達がいつも触れる内部の壁には、
手にも、見た目にも優しい木製合板を使いました。
いろんな場所に鏡を配置してあるのは、空間の広がりを体験し、
死角が出来にくい工夫からたどり着いた考えです。
特に保育園の子供達は、心身の発達が著しい時期です。
普段の暮らしの中で頭や体を自然に使いながら、園での生活が出来たらいいと考え、壁登り・木登りなども出来る場所もあります。
素足で触るフローリングはヒノキ材を加工した足に優しい床材です。
その下地も木製で、クッション性能に優れた構造とし、
成長期の子供たちの関節に負担の少ないものとしました。

内部デザインでは遊戯室上部の楕円の吹き抜けが特徴的です。
これは樽の内部と考えました。
食べ物を熟成させ進化させるために使う樽は、
子供達の成長を促す空間としての願いを込めたものです。
そのほか各部屋のサインにもご注目いただければ、楽しい工夫が感じられることでしょう。
この様な岳暘保育園新園舎に込めた設計の考え方は、すべて子供達の安全と、先生やご父兄様方大人達の安心をテーマに考え創った園舎です。
子供達の健やかな成長を願ってやみません。

住宅型有料老人ホーム あぜりあ

住宅型有料老人ホーム あぜりあ の設計は2016年から始まりましたが、青森県の窓口との折衝が難航し、2018年にやっと着工〜完成に至りました。
設計当初はサービス付き高齢者用住宅を目指したのですが、敷地のサイズから個室数が限定されるため、住宅型流量老人ホームへとスライドさせました。

建主の社会福祉法人北光会さんでは、特別養護老人ホームを始め、グループホーム、デイサービスなどを運営する実績はあるものの、住宅型有料老人ホームは今回が初めてのケースとなるため、手探りの状態で打ち合わせを積み重ねてきました。
ただ一貫しているのは、入居者の暮らしを第一に考えたケアに徹すること。
そのための運営と、建築空間を目指すということでした。

建築内容は木造2階建ての準耐火建築でシンプルなプランです。
回遊型の廊下に沿って各居室が21室(1階6室、2階15室)東西南北に配置されています。
1階には事務室や医務室、浴室(温泉)、パントリー+食堂が配置されています。
生活の中で廊下での出会いや語らいも大事に考え各所にソファが置かれています。
リハビリを兼ねて廊下を積極的に歩行出来る様広く明るい廊下にしました。
穏やかなゆっくりした時間が流れる落ち着いた空間です。

構造:木造2階建て
延べ床面積:951.64m2
完成:2018年9月

二の丸利活用施設 弘前城情報館

弘前城は小ぶりながら、城郭の構造がほぼ幕末期の姿で残っている、国内でも稀な史跡である。ところが明治以降、場内にはいろんな施設が建てられ、草木が植えられたため、現在幕末期の姿に戻す動きがあり、文化庁指導の元、整備事業が進められている。
今回の弘前城情報館は、二の丸エリアに存在した馬場の復元整備を主な目的とする工事であるが、先ずは予てから要望の多かった案内所建築を進めることとなり、建物が完成した。
現在は馬場を復元するための修景工事が進められている。
弘前城情報館には、案内所と公衆便所の機能があり、公衆便所は24時間解放されている。
案内所には場内を案内する担当者が常駐し、さらに弘前藩の歴史を映像技術で伝える展示機能を有している。より多くの若い世代に興味を持っていただける様仕向けたもので、将来にわたり弘前城の歴史が伝承されることを願っている。
建物は在来工法とし、軸組である柱と水平方向の架けられた梁でシンプルな構成とした。
史跡上に建つ建築の設計業務では常らしいが、基礎の形状・プランの工夫・デザインや色使いの難しさを痛感し、勉強させていただいた。
また場内では天守の石垣補修工事が進められていて、こちらは天守の曳家が話題となり、TVニュースでも放映されるほどであった。

構造:木造平家建て
延べ床面積:327.92m2
完成:2018年3月